ビットコインは5月の上げをそっくり吐き出し、トランプ氏がイランに「猶予は少ない」と警告した直後に7万7千ドル割れ。原油は1バレル約110ドルまで吹き上がり、金利上昇、暗号資産のロング5億6,300万ドル相当が一気に清算されました。そんな中でもStrategy社は押し目買いを敢行。先週だけで約2万4,869BTCを約20.1億ドルで追加しています。AnthropicはリーガルAIに本格参入。職種別プラグイン12種と20超のコネクタを一気に展開。GoogleはChromebookを終了し、GeminiネイティブのノートPC「Googlebook」に置き換え。かつて北米最大のビットコインATM運営だったBitcoin Depotはチャプター11の適用を申請。詳しく見ていきましょう。
ビットコインは7万7千ドルを割り込み、ムードは一気に反転。きっかけは地政学リスク。トランプ氏のイランへの警告で、原油は1バレル110ドル前後へ急騰、リスク資産は軒並み下落しました。イーサ(ETH)の下げはビットコイン以上。Fundstratのトム・リーは、原油価格とETHの売り圧力の逆相関を指摘しています。
清算は苛烈でした。レバレッジ・ロングが1日で5億6,300万ドル分吹き飛び、特にETHとBTCが直撃。いまや「Sell in May(5月は売れ)」の典型パターンか、との議論が公然化。ダウンサイドの目安は6万5千ドル、最悪なら3万ドル台半ばという見方も。弱気派は、米国債市場の崩れと、日本勢が第1四半期に米国債を約300億ドル売り越した(2022年以来の最大)ことを挙げます。これが利回りの上押し圧力となり、歴史的にビットコインには逆風です。
一方の強気派は、買い手の中心が2018年や2022年とは比べものにならないほど機関投資家寄りだと反論。その証左として、Strategy社は先週2.01億ドルで24,869BTCを追加し、保有は計843,738BTCに。その約97%はSTRC優先株の売却で資金調達。長期保有者は売っておらず、取引所の残高は約6年ぶりの低水準。構造的な買い需要は本物です。ただし短期保有者は含み損で、こうしたマクロショックに脆弱にもなっています。
もう一つ注意点。シティが「ブレイクスルーの加速で、ビットコインは量子コンピューティングから過大な脅威を受ける」とのノートを公表。今日明日の話ではないにせよ、タイムラインは前倒しになりつつある。頭の片隅に置いておくべきテーマです。
Anthropicは今週、大型の動き。目玉は新モデルではなく、法務業界への正面突破です。M&Aのデューデリジェンス、契約レビュー、就業規則・従業員ハンドブック作成、司法試験対策など、職種別のClaudeプラグインを12種投入。あわせてDocuSign、LexisNexis、Westlaw、Everlaw、iManageなど、リーガル系ソフトにClaudeを直結するMCPコネクタを20以上リリース。
戦略の肝は「グラウンディング(根拠付け)」。Claudeに出典をでっち上げさせるのではなく、コネクタで検証済みのケースファイルや一次法(判例・法令)をその場で引き込み、文脈に差し込む設計です。Descrybeは補完的な連携を発表。米国の一次法3億件の構造化データをClaudeに直接接続し、出典検証と、判例の引用関係を追跡する機能まで備えます。価格は強気。スタンドアロンが月25ドル、フルプラットフォームで月50ドル。WestlawやLexisNexisのAIツールの数分の一です。
司法アクセスの側面も重視。米国の民事訴訟では当事者の約8割が弁護士なしで出廷するとされ、Free Law ProjectやCourtroom5などのリーガルエイド団体と提携し、そうしたユーザーにはコネクタを無償提供。大手法律事務所には生産性向上、その他の層には市場拡大の両睨みです。
ビジネスの地合いも強烈。Dario Amodeiによれば、第1四半期の売上と利用は年率ベースで前年比80倍と、社内目標の10倍成長を大きく上回りました。企業評価は現在約3,800億ドル、次ラウンドは9,000億ドル超を狙う可能性も。IPOもそう遠くないかもしれません。
さらに別件で、Anthropicはビル&メリンダ・ゲイツ財団と2億ドル、4年の提携を発表。グローバルヘルス、疾病予測、低中所得国の教育などにフォーカス。公共財、評価ベンチマーク、ヘルスデータセットの整備。純粋なフィランソロピーか、AIガバナンス標準づくりへの戦略的布石か——おそらく両方です。
上場ビットコインマイナーの決算が出揃い、業界の向かう先が見えてきました。結論から言えば、いまや「採掘専業」はほぼ存在しません。
Marathon(ティッカーMARA)は第1四半期の売上が1億7,460万ドルで前年比18%減、予想未達。純損失は13億ドルですが、そのほとんど(約10億ドル)は保有ビットコインの時価評価による未実現損。オペレーション面ではハッシュレートが過去最高の72.2EH/s(前年比+33%)、採掘は2,247BTC。ネットワーク難易度の上昇で1BTC当たりコストは4万ドル超に跳ね上がりました。戦略面ではLong Ridge Energyを買収し、約505MWの電力と1,600エーカーを確保。AI向け100MWの設備は2027年着工、2028年半ば稼働予定。電力単価は1MWhあたり約15ドル。人員は15%削減。
CleanSparkも似た構図。売上1億3,600万ドルで25%減、純損失3億7,800万ドルのうち2億6,300万ドルは非現金のビットコイン時価評価損。1,799BTCを採掘し、マージンは4割超を維持。電力コストはkWhあたり5.2セントまで低下。保有は13,561BTC(約9億2,500万ドル相当)に現金2億6,000万ドル、未使用のBTC担保与信4億ドル。ERCOT承認済み容量は585MWに達しました。
両社ともAIとHPCへ大きく舵を切っています。ストーリーは「マイニングでインフラを作り、AIテナントで余剰を収益化」。この仮説の成否は、ハイパースケーラーがマイナーから本当に借りるのか、それとも自前で建てるのかにかかります。マクロ環境は厳しい。ビットコイン価格は低迷、難易度は上昇、そして「ビットコインの代替インデックス」というだけでプレミアムをくれる市場ではなくなりました。生き残るのは、電力が安く、本当に多角化できるところです。
Metaplanetの第1四半期決算は、見る人の解釈で意味が変わるロールシャッハ。見出しは純損失7億2,500万ドル。ただし非現金のビットコイン評価減7億3,700万ドルを除けば、中身はむしろ堅調。売上は前年比+251%、営業利益+283%。ビットコインは1枚も売らず、むしろ5,075BTCを平均約7万9,000ドルで積み増し、保有は4万0177BTCに。
これでMetaplanetは世界の上場企業として3位のビットコイン保有者となり、日本の上場企業保有分の約87%を占めます。長期目標は2027年末までに21万BTCという強気設定。直近の積み増し資金は、2月の株式発行で122億円、3月に407億円、さらに5億ドルのBTC担保与信枠(約3億200万ドル使用)で賄いました。
CEOのサイモン・ゲロヴィッチ氏は神田潤一議員と面会し規制明確化を提言。ビットコイン連動の永久優先株という国内初のスキームも申請中。日本の資本市場向けに、セイラー流プレイブックを実装している格好です。加えて、ステーブルコイン発行体JPYCへの出資や、米国での資産運用子会社立ち上げも進めています。
とはいえ注視点も。フルスタックの平均取得コストは1BTCあたり約10万4千ドル。現在のビットコインが7万6千ドルなら、含み損は約32%。この戦略は、調達が常にNAV以上で続き、かつ積み増し期間中にビットコインが上昇トレンドを保つ限り機能します。逆にmNAV(時価純資産価値)が圧縮したり、18カ月ほど横ばいが続けば、希薄化の計算は一気に厳しくなります。
一方、Capital Bはトレジャリーに1,500万ドル分のビットコインを追加。5月のコーポレート・トレジャリー新規参入発表はわずか4件で、その一つ。トレジャリー戦略は死んでいませんが、「楽に儲かる」フェーズは明らかに終わりました。
噛みしめたい話をひとつ。イランが「Hormuz Safe」というプラットフォームを構築中とされ、ホルムズ海峡通航の船舶保険をビットコイン建ての保険料で提供、売上は100億ドル超を見込むというもの。もし本当なら、制裁下で地政学的にせめぎ合う回廊における「中立なお金」としてのビットコインの最も具体的な試金石です。政権への評価は脇に置いて、ネットワークが実際にそう使われるかどうかを見極めましょう。